1) 阿膠(にかわ)
まずは、阿膠(あきょう)。牛の皮から作った「にかわ」です。○帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)など、下血を止める処方に使われています。(○=草カンムリに弓)
2) カラスウリ
秋によく見かけるカラスウリは、括呂実(かろうじつ)として胸痺(きょうひ:胸が締め付けられる感じ)や、痰飲(たんいん:胃に水が溜まる感じ)を治す特効薬として使われています。カラスウリの粉は「天花粉(てんかふん)」と呼ばれ、皮膚に塗ってあせもなどの特効薬になります。
3) 竜眼肉(ライチに似た果実)
竜眼肉(りゅうがんにく)は、ムクロジ科の果実の可食部である仮種皮を乾燥した物で仲間にはライチなどがあり、鎮静、滋養、健胃の作用に用いられます。
4) スイカズラの花
スイカズラの花は金銀花(きんぎんか)と呼ばれ、解熱、解毒作用があり、風邪薬の銀翹散(ぎんぎょうさん)に用いられます。
5) セミの抜け殻
セミの抜け殻は、蝉退(ぜんたい)と呼ばれ、解熱や皮膚病に効果があり、湿疹の特効薬の1つである消風散(しょうふさん)を構成する生薬です。
6) イトヒメ萩の根っこ
ヒメハギ科イトヒメハギの根は遠志(おんじ)と呼ばれ、脳を活性化するサーチュイン遺伝子に作用して、認知機能や抗加齢効果を司ることが解明されてきており、今最も世界で注目されている生薬です。
7) ヒル
水蛭(すいしつ)は、知らない間に皮膚から血液を吸い取るチスイビルを捕まえて乾燥した物で、オ血(おけつ:血液の滞り)を改善するのですが、中でも普通の駆オ血剤(オ血を治す処方)では手に負えない特に古くなった陳旧性オ血を改善する強力な作用があります。(オ血のオは、病の丙が於に)
8) 古いかまどにたまった焼土
茯竜肝(ぶくりゅうかん)、黄土(おうど)は、古いかまどの中に溜まった焼土のことです。黄土湯(おうどとう)は文字通り黄土を湯で煎じた物なのですが、桃花湯(とうかとう)と一緒に潰瘍性大腸炎に用いて著効を得た経験があります。
9) トリカブト
附子(ぶし)はトリカブトの根塊なのですが、そのままでは猛毒があり、修治(しゅうち)と呼ばれる様々な解毒処理を経て使用されます。多くの場合、体を温め新陳代謝を増すためには炮附子(ほうぶし)を用い、痛みを取るためには白川附子(しらかわぶし)を用いて使い分けます。
10) 地黄(ジオウ)
ゴマノハグサ科アカヤジオウの根茎の地黄(じおう)は多くの処方(例えば八味地黄丸:はちみじおうがん)に用いられますが、そのまま乾燥した乾地黄(かんじおう)は清熱涼血薬として、蒸してから乾燥する熟地黄は日本薬局方のジオウとして重要な滋養、補血薬として用いられています。
奥が深い漢方の世界が垣間見えますね。今回は変わった薬剤のお話でした。
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